10 祭りの夜

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 10ー6 悪運を運ぶ天使ですと?  「聖女は、全部で13人いるんですよね?」  私は、ウルダムさんに訊ねた。  「それぞれがいろんな力を持ってるんですか?」  「それには、私がお答えします!」  背後から急にデミルさんがぬっと顔を出したので私は、ぎょっとしてしまった。デミルさんは、悪びれた様子もなく私の隣の椅子に腰かける。  「この地に召喚された聖女は、ユイ様を含めて13人。彼女らは、それぞれに異なる能力を持っています」  デミルさんは、ルシアさんが持ってきたクルの実で作った酒をぐっとあおるとぷはっと息をついた。  「この酒は、実にうまい!なんの酒です?」  「クルの実で作った果実酒だ」  エリクさんが答えるとデミルさんが感嘆した。  「クルの実ですか。あの小さな実で酒を作るとは。思い付きもしませんでした」  いや。  この『ヴェータ』沼のクルの実は、でかいので!赤ん坊の頭ぐらいはあるのが普通だし。  「それで?」  私は、デミルさんに話を続けるように促した。  「聖女の力について詳しくきかせて!」  「聖女の力ですか?それなら、ユイ様が一番強いのではないですか?」  デミルさんが少し赤い顔をして話す。  「この地に召喚されたときからは、想像もできないほどの成長をされましたな!私も他の神官たちに鼻が高いですよ」  「そういうのじゃなくて!」  私は、デミルさんを睨み付けた。  何?  この酔っぱらいは!  私は、デミルさんにきいた。  「聖女の中に生物の成長を操る力を持つ人がいるってきいたんだけど?」  「それなら、ミア様のことですね」  デミルさんの出した名前に私は、ちょっとぎくっとなった。だって、ミアって私に毒を盛られたとか言い出した人じゃね?  まずいかも・・  そんな人が私のお願いをきいてくれるのかな。  私がふと顔をあげるとデミルさんがじとっと私のことを見つめていた。  「ミア様がその力を発現させたのは、つい最近のことですが。なぜ、そのことをユイ様は、お知りなのですか?」  「それは、ルキエルが教えてくれたから」  私が答えるとデミルさんが複雑な顔をした。  「あなたの守護天使ですね?」  デミルさんは、ふむっと考え込んだ。  「あなたの天使は、今もあなたの側にいるんですか?」  「いるけど。それが何か?」  私は、デミルさんの態度が気に入らなくてちょっとムッとしていた。うちのルキエルのことを舐めんなよ!  デミルさんが慌てて応じた。  「いえ、別に、あなたの天使がどうこう言うつもりはないんです。ただ・・」  「ただ、何よ?」  私がふんすと鼻を鳴らすとデミルさんが言いにくそうに告げた。  「13番目は・・いや、ルキエル様は、悪運を運ぶといわれる天使なので」  はい?  なんですと? 
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