10 祭りの夜

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 10ー7 いい仕事してるよ!  ルキエルが悪運を運ぶ天使ですと?  私は、衝撃を受けていた。  いや。  常日頃から嫌な感じがするとは思っていたんだけど、まさか、貧乏神扱いされてたなんて!  同じ天使なのに、なんか不憫な奴だな!  しかし、それですべてがふに落ちるかも。  ルキエルが憑いたがために私は、毒を盛ったと勘ぐられ、さらには、毒殺されそうになり、さらには、なぜか少し幼くなり、そして、極めつけには、名高いスラムであった『ヴェータ』沼に堕とされたのだ。  なるほど!  私は、ぽん、と手を打った。  それでか!  『何、納得してるんです?』  ルキエルの怒りに震えるような声が聞こえた。  『ほんとに、誰のおかげで生き延びてると思ってるんです?』  はい。  たぶん、あなたのおかげです。  私は、笑ってごまかそうとしたが、ルキエルは、ご機嫌斜めだ。  『わかりました。もう、あなたのためには、何もしませんから』  ごめん!  ルキエル、そんなこと言わずにこれからもいろいろ助言して!  直接、力を貸してとは言えないのがなんかもやもやする。  でも、ルキエルに力を使わせたらその対価として記憶を持っていかれてしまうからできればルキエルの力を使いたくないので。  というか、ルキエルの他の天使が力を使う代わりに得る対価って、何なわけ?  みんな、こういうエグいことなの?  「ルキエル様は、いろんな意味で特別な天使なのです」  デミルさんが二杯目のクル酒をおかわりしながら話す。  「女神が最後に産み出した天使であり、もっとも力のない天使と言われています」  「そうなの?」  私は、デミルさんに訊ねた。  「でも、毒を盛られた私を助けてくれたのはルキエルじゃん」  ほんとは、即死しちゃうところを助けてくれたんでしょ?  ルキエル、いい仕事してるよ!  物知りだし!  「ルキエル様は、そのときに力を使い果たし、今では、人の姿をとどめることもできなくなっている筈」  デミルさんがおかわりしたクル酒をルシアさんが運んできて渡すと、それを受け取ってごくごくと飲み干す。  一気飲みだな。  私は、そのいいのみっプリに感心していた。  坊さんのくせに酒のみとはな。  
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