10 祭りの夜

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 10ー9 もう、両想いでいいんじゃ?  「エリク様・・」  横できいてたルシアさんがなんか涙ぐんでいる。デミルさんは、ともかく、従兄弟とかいってたウルダムさんは、ふぅっと吐息を漏らす。  エリクさんは、話を続ける。  「ユイは、毎日、思いもしないような騒ぎを引き起こした。私の穏やかな生活をぐちゃぐちゃにしていった。そして、いつしかこの『ヴェータ』沼そのものまで変革していった。その上」  エリクさんが胸元から取り出したスマホをそっとテーブルに置いた。  「私に魔力がないわけではなく、私も魔法を使えることを教えてくれた」  エリクさんがスマホに魔力を流した。ふわっとスマホが輝き出したのを見てウルダムさんが驚いた表情を浮かべていた。  「ユイは、私が目を離すとすぐに無茶をする。先日、この『ヴェータ』沼が何者かに攻撃を受けたときも1人でこの沼を守ろうとして倒れた。3日間、ユイが目覚めなかったとき、私は、自分のせいだと思った。女神が私からユイを奪おうとしているのだと」  うん?  エリクさんの告白にデミルさんが興味なさげに責めるように口を挟む。  「それが、なんだというのです?ユイは、やはり神殿に戻してもらいます。あなたの話が本当なら、ユイは、ここにいることで危険な目にあっていることになります」  「だから、私がここにいたいって言ってるじゃん!」  私は、デミルさんを睨み付けた。エリクさんが私を見て優しく微笑んだ。  「私も・・ユイを神殿に渡したくはない。ずっと私の側にいて欲しい。ユイを離したくはない」  エリクさん?  私は、なんだか胸がどきどきと高鳴った。エリクさん、私のことそんな風に思ってくれていたんだ!もう、これは、両想いといってもいいのでは?今夜は、赤飯炊かないと!  「エリク、お前の気持ちはわかるが、このままユイ様をここに置いておくわけにはいかない。誰がユイ様に危害を加えようとするかもわからないんだ」  ウルダムさんが余計なことを言い出すので私は、きっとウルダムさんを睨み付けた。  「私は、ここから動きませんから!エリクさんやみんなとここで暮らします!邪魔しないで!」  「しかし」  「もし!」  私は、ぐだぐだうるさいウルダムさんとデミルさんを睨み付けてきっぱりと告げた。  「無理矢理連れ去ったりしたら私!うんと後悔させてやりますから!」  どうやって後悔させるのか、とかはきかないで欲しい。私は、猫のようにふぅっ!と毛を逆立てて2人を威嚇した。  そのとき。  黒い影が走ったと思ったら、それが私のことを咥えて背に放り投げた。テーブルがひっくり返ってウルダムさんとデミルさんも想像できないぐらい素早く横に飛び退く。
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