10 祭りの夜

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 10ー12 踊ってもらえますか?  私が王宮やら神殿やらに顔を出すことは、どうやら避けられないことのようだった。  私は、嫌なことはできるだけ先に延ばす派なのだが、デミルさんの強い要望にて冬までには、王都の神殿へと顔を出すことが決まった。  とりあえず神殿に顔を出せば、王宮の方は、ウルダムさんがなんとかしてくれるらしい。  ありがとう、ウルダムさん。  私は、そっと心の中でお礼を言った。  それから。  祭りは、そのまま盛り上がり、私たちもみな、楽しく過ごしていた。  ウルダムさんもデミルさんもクル酒を飲みながら和やかに踊っている人々を眺めていた。  私もヘイを膝の上にのせて撫でながら微笑ましく見つめていた。  お腹もいっぱい。  夜も更けてきてなんだか、もう、眠くなってきた。ヘイもあくびをしている。  私が適当に理由をつけて帰ろうかと思っていたら、エリクさんがそっと耳元で囁いた。  「ユイ」  私は、エリクさんを見上げた。イケメンオーラがキラキラしてて夜になって真っ暗になっているのにエリクさんだけは、輝いているように見える。  エリクさんは、私に手を差し出すと告げた。  「踊ってもらえますか?」  「も、もちろん!」  私は、食いぎみに答えるとエリクさんの手を握った。  その後で、私は、踊れないことを思い出してしまう。  「やっぱ、無理です!私、踊れないので!」  でも、エリクさんは、私に微笑むと私の手をひいてその場に立ち上がらせた。ルシアさんが膝の上にいたヘイを受けとると抱き上げる。  ヘイの懐きっぷりハンパない。まるで、ルシアさんが聖女かと思うほどに。  私がまだ迷っているのを見てルシアさんがふふっと笑った。  「大丈夫。エリク様に任せておいたら」  はい?  私がエリクさんの方へと視線を戻すとエリクさんは、私の手をとり眉尻を下げていた。  「私と踊るのは嫌か?ユイ」  そんなわけないない!  私は、ぶんぶんと頭を振った。  エリクさんと踊れるなら、悪魔に魂だって売りますよ!  エリクさんを見上げている私の様子を見て、エリクさんがふっと笑った。それは、すごく幸せそうな笑顔で。私も思わず幸せな気持ちになってくる。  
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