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11 ダンジョンにて
11ー1 邪魔しないで!
「さあ、お手をどうぞ、ユイ」
エリクさんが私に手を差し伸べる。私は、エリクさんへと手を差し出そうとした。
と、突然、ピピピッという音が聞こえてきて。
「邪魔しないで!」
私は、音を消そうとするように両手を振り回した。が、音は、消えるどころかだんだん大きくなってきて私は、両手で耳を塞いだ。
「うるさい!!」
叫んだところで目が覚めた。
私は、はぁっとため息を漏らして枕元のスマホの音を止める。これは、新しく付け加えた目覚まし機能だった。
だって、毎朝、ルシアさんが早起きしてるのに私は、なかなか起きられなくって!
しかし。
なんか、とってもいい夢だったような気がするのに、目覚ましのせいで思い出せない。
私は、もやもやしながらも起き出すと部屋にメイドさんが置いてくれている水差しから水を汲んで顔を洗う。ちゃんと脇には、布が置かれているのでそれで顔を拭き、枕元に用意されている淡いピンクのワンピースに着替えた。
でも食堂へ行くとすでにみんな起きていて私が最後だったようだ。なんと寝坊助のエリクさんまで起きている。
私は、慌ててルシアさんの横の自分の席についた。すぐにレンドールさんが私の分の朝食を運んでくれたので礼を言ってからみんなと一緒に食べ始める。
今朝の朝食は、焼きたての黒パンにクルの花の蜜をかけたものとクルの花のお茶、それにベーコンみたいな肉と特大の目玉焼きだ。どれも私の好物だし!
パクパク食べてたら、エリクさんがクスッて笑った。思わず頬が熱くなる。
「ユイを見てると元気が出てくるな」
エリクさんが微笑ましげに言うとクーノが呆れたように笑った。
「ほんと、悩みがない感じがするよな」
なんですと!?
私は、もぐもぐしながらクーノを睨み付けた。
私にもいっぱい悩みがあるのに!
もっかの一番の悩みは、ダンジョン攻略についてだ。
予想通り、合同結婚式から2日後には、キンドさんからダンジョン攻略の要請がきた。けど、神龍族のみなさんは、今、絶賛新婚中で、頼みにくいことこの上ない。
だって、ダンジョンの規模もわからないし、何日攻略にかかるかもわからないし。
新婚さんたちを巻き込めないよ!
朝食後、エリクさんとノマさん、クーノ、ルシアさん、それに私は、食後のお茶をいただきながら話し合った。
その結果、ダンジョン攻略には、ノマさんとクーノ、そして、私とヘイで出掛けることになった。
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