2 聖女は、隠されたい?

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2 聖女は、隠されたい?

 2ー1 聖女なのか?  私が『ヴェータ』沼に落ちてきた翌日のこと。  早朝にルシアさんが血相を変えてエリクさんの小屋に現れた。ちなみに私は、そのとき、まだ熟睡中だったんだけど。  たたき起こされた私にエリクさんが告げた。  「奇妙なことが起きた」  はい?  私は、寝起きからどっきりしていた。    いったい何が起きたっての?  ごくりと喉を鳴らして立ち尽くしている私にエリクさんが口を開いた。  「とにかく外へ」  私は、エリクさんに促されて小屋の外へと出た。  朝のドブ川は、船が行き来してせわしなげな様子だった。が、その船を操る人々がちらちらとこっちをうかがっているような気がした。  気のせいか?  いや。  確かに見られている。  だって、今、船頭さんと目があったし!  私と目が合うとそのおじさんは、慌てて目をそらしてさっさと船を漕いで去っていく。  何?  この感じ。  その答えは、すぐにわかった。  「見て、タザキ」  エリクさんに言われて小屋のデッキからドブ川を覗き込んで私は、すっとんきょうな声を出してしまった。  「なんじゃこりゃあっ!?」  確かに昨日まで真っ黒な汚泥があったはずなのに覗き込んだ先の川面は、澄んだ水に変化していた。  私は、清らかな岩清水くらい透明になってる水面にうつった自分の姿を見つめて再び叫んだ。  「なんですと?」  そこにうつっている私の姿は、確かに見覚えのある顔だった。  黒髪に少し垂れた黒目がちの瞳。私は、年のわりに幼げといわれてきたんだけど、それにしてもこれは、ちょっと。  「若返ってる?」  私は、信じられない思いで自分の頬にそっと両手で触れた。  間違いない。  これは、数年前の私。  中学生の頃の私の姿だ。  なんで?  「この『ヴェータ』沼の汚れがたった一晩で浄化されている」  エリクさんが掠れた声で言うのが聞こえてきて私は、はっと我にかえった。  「それもこの小屋の周囲のみ。これは、どういうことだ?」  どういうことだ、って言われてもなぁ。  私は、ぽりぽりと頭を掻いた。  「なんででしょうね」  ふはは、とひきつった笑いを浮かべる私にエリクさんがずばっと訊ねた。  「タザキ、君は、聖女なのか?」      
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