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2ー2 他に行くところがないから
聖女。
それは、聖なる女。
ルキエルの説明によるとそれは、異世界から召喚されてくるものらしい。
様々な能力を持つ者がいるが、共通しているのは、この世界の常識を越えたチートな力。
そして、聖女には、1人づつにそれぞれの守護天使がいる。
どんな天使が守護につくかによってその聖女の力が表されるらしい。
私についた天使は、ルキエル。
13番目の天使。
別名『忘却の天使』
「君は、聖女なんだろう?タザキ」
エリクさんにきかれて私は、言葉に詰まった。
ここで認めてしまっていいの?
私は、何者かに暗殺されかけたせいでルキエルの手でここに飛ばされたらしい。
らしいというのは、私にその記憶が欠片も残っていないからだ。
正直にいえば私には、この世界に召喚されてからの記憶がない。
それは、ルキエルのせいだ。
天使は、聖女のために力を使う度、聖女から対価を得る。
ルキエルが私を転移させた結果、私は、この世界に召喚された前後の記憶を奪われた。
そこまでは、昨夜、ルキエルからきいていたのだが。
しかし、ここで私が聖女だと認めてしまうのはまずいんじゃない?
だって、聖女がここにいますよって認めちゃったら隠れてる意味がないし。
私は、すいっと視線をそらせる。
「なんのことです?私は、ただの通りすがりの旅人。聖女なんかじゃありませんけど」
私の返答にエリクさんが黙り込む。視線をそらしていてもエリクさんにまじまじと見つめられているのがわかった。
「もし、君が聖女ならこの力も納得ができる。だが、聖女がここに降臨するわけがない」
エリクさんは、ふっと笑みを浮かべる。
「君が聖女じゃないというなら、たぶん、その通りなんだろう」
「でも!」
ルシアさんがエリクさんに詰め寄る。
「この力は、聖女としか思えません!」
「だが、本人が違うといってるからね」
エリクさんがにこっと微笑む。
「なんにせよ、本人の意思は大切だし。私は、聖女でなかったとしてもタザキのここで暮らしたいという意思を尊重するつもりだ」
いや!
私は、心の中で叫んでいた。
ここで暮らしたいなんて微塵も思ってないし!
ただ、 仕方ないから!
他に行くところがないから、ここにいるだけだし!
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