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2ー5 こんなに美味しいものを食べたことがなかった。
昼食後、しばらくして私の部屋が出来上がったので中を確認していると姿が見えなかったクーノが部屋に入ってきた。私は、きぃっとクーノを睨み付けた。が、クーノは、怯むこともなく私に小さな皮の袋を差し出した。
うん?
中を見ると丸い赤色の木の実が20個ほど入っていた。
「それ、食えよ」
クーノは、そっけなく告げた。
「それ、クルの実だ。栄養があるから食え。お前、もっと食わないと大きくなれないぞ」
はい?
もしかしてこの人、私を心配してくれてる?
私は、クーノに礼を言おうとしたが、クーノは、木の実の入った袋を渡すとさっさと立ち去ってしまった。
ムカつく。
まるで私がお礼もちゃんと言えない人でなしみたいだし。
私は、袋から取り出した赤いドングリほどの大きさの木の実を指先で摘まんでじっと見た。木の実というか、木苺の実みたい。
私は、思いきってその木の実をぱくっと食べてみた。齧ると甘酸っぱい汁が口に拡がって唾液が出てくる。まるでリンゴみたいな味で美味しい。
2日間何もほとんど食べてなかった私は、夢中でその木の実を食べた。
食べてるうちになんか涙が出てきて。
今まで私は、こんなに美味しいものを食べたことがなかった。
たぶん晩御飯も食べられないかも、と思って少しだけ木の実を残しておく。
増設された新しい、といってもどこかで拾ってきたみたいな木材で出来た部屋だったが、私のためにエリクさんがわざわざ依頼して作らせた部屋は、畳4畳ぐらいの狭い窓もない部屋だった。でも、自分専用のベッドも作ってもらえたし、贅沢はいえない。
一応、雨風は、防げそうだし。
何より隣の部屋は、イケメン部屋だし!
部屋からリビング兼食堂兼診察室に顔を出すとエリクさんがお客さんらしい女の人と話をしていたところだった。女の人は、エリクさんからあの例のクソ不味い謎の液体を渡されえづきながら飲み干していた。
エリクさんは、この液体1杯につき銅貨1枚を受け取っていた。ちなみにこの国では、銅貨1枚は、5円ぐらいの価値でしかないらしい。
私たちは、お客さんが去っていくのを2人でお見送りする。
この『ヴェータ』沼では基本、移動は船になる。といってもみながそんな立派な船に乗れるわけではない。中には、丸太を縄で縛った丸太舟を使っている人もいる。
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