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2ー6 泣いちゃうかもしれない。
お客さんを見送って小屋に戻ろうとしていると別の船が近づいてくるのが見えた。
すごく立派な造りのちゃんとした木造船に数名の男の人が乗っているのが見える。
また、お客さん?
だが、エリクさんの表情が強ばるのがわかった。
「タザキは、奥の部屋に行ってなさい」
エリクさんは、私を小屋の中に押し込んだ。
「いいと言うまで何があっても出てくるんじゃない。いいね?」
なんか、ヤバい人たち?
私は、自分の部屋に行くと耳をそばだてていた。
この壁というにはあまりにも心もとないものの前には、秘密なんてものは、存在しない。
「これは、これは。キンドさん、いったい今日は、なんの用ですか?」
エリクさんがとっても下手に出ているのがわかる。そのキンドさんとやらは、渋い、タバコとか酒で潰してるのかな、って感じの声で応じた。
「エリク様こそ、最近、変わった生き物を拾われたとか」
キンドさんが慇懃無礼な態度で話しかけるのが聞こえた。
「一応、お伝えしますが、この『ヴェータ』沼に落ちてきたものは、すべてこのライディア・キンドのものだということ、お忘れではないでしょうね?」
なんですと?
もしかして、この人が言ってるのは、私のことですか?
「あの者は、そんな大層な価値がある者ではありません。ただの子どもにすぎません。孤児が1人増えるのを防ぐのですから別にかまわないでしょう。その分の税は、納めている筈です」
エリクさんが権利を主張するのを私は、心の中で応援していた。なぜなら、もし、エリクさんが諦めたら私は、この怪しげな人のもとに連れて行かれてしまいそうだから。
なんかわからないけどこの人と行くよりは、エリクさんのもとに残る方がずっとましって気がする。
「ああ、そのこと、ね」
キンドさんとやらが悪役っぽい調子で話すのが聞こえた。
「エリク様、あなたには、特別に目をかけて差し上げてきました。もちろん税も他の者に比べれば少額にして差し上げているわけです」
「何が言いたい?」
エリクさんがちょっとキレそう?
私は、うずうずしていた。エリクさんに偉そうにしてるなんて、何様のつもり?そんな奴にこそルキエルの呪いをかけてやらなくては!
私は、ルキエルを小声で呼んだ。が、奴は、答えなかった。
なんで?
こんなときこそ、出番なのに!
このままじゃ、エリクさんがピンチ!
悪い奴にエリクさんがあんなことや、こんなことをされちゃったら、私、すごく泣いちゃうかも!
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