2 聖女は、隠されたい?

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 2ー9 喜んで!  「そうなのか?」  うん?  なんか、微妙に場の雰囲気が変わった?  今までの張り詰めた感じが、ちょっと戸惑いぎみの感じに変わったような気がする。  ええっ?  もしかして細かいことにうるさい奴だとか思われてる?  それともこの世界じゃ、姓で呼ぶのが普通だとか?  エリクさんが。  笑いをかみ殺している?  なんで?  私、おかしなことを言ってしまった?  ともかくここは、自分の意見を述べさせてもらうことにする。  「私は、エリクさんのところに残りたい。でも、何か、役に立てることがあれば協力してもいいです(有料で)」  「ほう」  キンドさんが目を細める。  「どうやら君は、エリクよりは世慣れているようだな」  キンドさんが少し考えてから私に告げた。  「この『ヴェータ』沼では、水は、金より強い。噂では、君は、水を出せるそうじゃないか。私のために水を出してくれるなら瓶1つにつき金貨1枚出そうじゃないか」  はい?  金貨1枚ですと?  いったいいくらぐらいの価値があるんですか?  『金貨1枚は、銀貨100枚の価値があり、銀貨1枚は、銅貨100枚の価値があります』  ルキエルが囁き女将みたいに囁く。  としたら、金貨1枚は、約5万円ぐらい?  「やります!やらせてください!」  私は、即決した。  頭の中で金貨がじゃらじゃらいう音が聞こえてくる。  「よし!決まりだ」  キンドさんがにっと笑った。  こうして私たちの間で契約が取り決められた。  毎日、キンドさんのとこの人が船で瓶を持ってくるからそれに私は水を入れる。そして、金貨を受け取る。  うん。  単純明快。  取り合えず、今日からということですぐにキンドさんのとこから船がきたので私は、積まれている瓶に水を入れようとした。  が。  やっぱり瓶は、真っ黒にカビている。  私は、まず、瓶を洗うことにした。  ちなみに私の仕事っぷりを監視しているキンドさんは、無言で私のやっていることを見つめていた。  私は、きれいになった瓶に水を注いだ。  黙ってみていたキンドさんが近づいてきて持っていたカップで瓶から水をすくって1口飲むとかっと目を開いた。  「うまい!」  キンドさんは、カップの水を飲み干すとまた水を汲んで飲んだ。  「こんなうまい水、王都にもないぞ」  なんか、褒められていい気分になってくる。  キンドさんは、私に金貨を1枚渡すとにっと笑った。  「これから頼むぞ、ユイ」  「喜んで!」  私は、金貨を握りしめて微笑んだ。  
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