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2ー10 幸せな夢
私は、キンドさんから受け取った金貨をエリクさんに渡そうとしたが、エリクさんは、受け取ろうとはしなかった。
「こんなもの、受け取るわけにはいかない」
エリクさんは、頑なだった。でも、私が家賃と生活費だと言ったらなんとか受け取ってくれた。
1ヶ月金貨1枚の生活費。
かなりお得なような気もする。しかも、金貨は、毎日1枚手に入るのだ。これで贅沢とはいわないが、ちょっとはマシな生活ができるかも。
でも、エリクさんが用意してくれた夕食は、やはりいつものメニューだった。
まあ、さっき生活費払ったとこだしな。
夜。
私は、自分の部屋でベッドに横になり考えていた。
何を考えているかって?
もちろん明日から手に入ることになっている金貨の使い道だ。
これ以外に今の私に明るい情報はないし。
水がこんなに高く売れるのならもっと水を売ってみる?
いや。
これは、キンドさんとの利権問題に発展しそうだし止めた方がいい。
では、これを資金にして何か商売を起こすというのは?
いろいろと考えているとお腹がぐぅっと鳴った。それは、そうだ。私は、ここに来て以来、まともに食事をとれていないし。
水だけは、自分で作れるから不自由はしない。
私は、起き出すと台所へ行き水を飲んだ。
エリクさんは、もう、休んでいるようだ。
彼は、イケメンだがどうやら遊び人タイプではないようだ。早寝早起き。健康的なイケメンらしい。
私は、小屋の外のデッキに出ると空を見上げた。
ここは、周囲をドブに囲まれてて相変わらず酷く臭い。
そして、貧乏人は、早寝早起きだと私は気づいた。
周囲の小屋の住人たちももう起きている様子はなかった。
立ち込めるドブ臭さを我慢すれば夜は、静かでしかも、空がきれいだ。異世界は、どうやらまだ大気汚染とかがないらしくて見上げたら満点の星空が拡がっている。
私は、デッキに横になって空を見ているうちにいつしか眠りに落ちていった。
夢の中で私は、なぜか、裕福になったエリクさんと普通にマンションで暮らしていた。
ちょっとした幸せな夢だ。
『ほんとバカで単純なんだから・・』
どこかでルキエルの声が聞こえた。
誰が、バカで単純だ!
私は、夢の中でルキエルに怒鳴っていた。
そこからなんだかドタバタの喜劇みたいな夢になってしまったのだった。
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