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2ー13 泣かないけど
エリクさんの告白に私は、へぇっと思っていた。エリクさんは、私の反応があまりにも薄いので奇妙な表情で私を見た。
「私は、魔法が使えないんだ」
2度繰り返されても私の反応は、変わらないし。そんなの大抵の人は、魔法が使えないんじゃ?
エリクさんは、私の様子に慌てて説明し始める。
「このラシウス王国においては、魔法が使えないと生きていけない。竈で煮炊きすることだって魔法が使えないとできない」
マジで?
私は、訊ねた。
「でも、火をつける道具ぐらいありますよね?」
「あるけど。着火の魔道具だっていくらかの魔力がなくては使用することはできない。私には、それすらも使えないんだ」
エリクさんが悲壮な顔でいうものだから私は、不覚にも同情してしまった。
「だから、この小屋には、火の気がないんですか?」
私が問うとエリクさんが頷く。
「私は、無能だ。だから、王都を追われた」
そうなんだ。
私は、エリクさんに提案した。
「もしかしたら私がお手伝いできるかもしれないですよ。というか手伝わせてください、エリクさん」
エリクさんは、ふっと柔らかく微笑んだ。
はぅっ!
私は、思わず目を閉じて耐えていた。イケメンのパワーハンパない!
これが十分魔法なんじゃ?
と、なんだか、外が騒がしい?
ルシアさんがばん、と戸を開けて駆け込んでくる。
「大変です!エリク様!」
なんですと?
私とエリクさんは、ルシアさんに促されて小屋の外へと出た。
と、そこは、鬱蒼と繁った森の中。
じゃなくて、木が繁ってる?
「クルの木が!」
ルシアさんがあわあわして騒いでいるし、エリクさんも目を丸くして驚いている。
どうやらこの小屋を包み込むようになんかの木が繁っているようだ。
がやがやと周囲の小屋の住人たちも集まってくる。
私は、嫌な予感中だった。
さっき、置いといた木箱を目で探すと木箱は、木の根でひび割れていた。
やっぱり!
これは、さっき植えた木の実の成長してしまった姿だった。
「ユイ?」
エリクさんが微笑んでいるが、目は、笑ってない。
いや。
私は、ははっと笑ってごまかそうとしたがダメだった。
私は、1日に、というか午前中だけで2度も叱られてしまった。ほんとに気の弱い子供なら泣いてしまうところだ。
いや。私は、泣かないけどな。
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