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1ー3 とどめ指しちゃった?
みるみる内に男の子は、顔色が青ざめていくし、お姉さんも世も身もないというように泣き出すし。
もしかしてこれ映画的なものじゃないの?
私は、不安になってきて。
そのとき、誰かが私に囁いた。
『あたりまえ!さっさと治して権威を見せつけるのよ!』
はい?
治す?
どうやって?
私が考えている間にもどんどん男の子は、悪くなりお姉さんは、もう、もともとの美人っぷりも信じられないぐらい取り乱して顔もぐしゃぐしゃだし。
『急いで!』
急いでって、いったいどうしたらいいわけ?
私は、一生懸命考えた。
確か、毒にやられたとか言ってなかったっけ?
なら、水で薄めるとか?
私は、頭の中で子供の体の中の毒が薄まるのをイメージして魔力を放出してみた。
すると。
やばくなってる子供の体がぷくっとふくらんできたかと思ったら水でぶよぶよになってきて。そして、全身から滝のようにドドメ色の汗が流れ落ちてきて。
私は、あわあわなっていた。
やばい!
絶対、やばい!
もしかして私、子供にとどめさしちゃったんじゃね?
お姉さんとエリクさんも呆然としてあり得ない変容をとげている男の子のことを見つめている。
男の子は、どろどろの汗の水溜まりの中に横たわってて、顔色が真っ白で。
もう、ダメだ!
そう、思ったとき、男の子がふぅっと息を吐いた。
エリクさんが信じられないというようにお姉さんに告げた。
「もう、大丈夫だ」
マジで?
お姉さんは、男の子を抱き締めて泣きながらエリクさんを崇め奉るような目で見つめてる。
「ありがとうございます、エリク様」
ええっ?
いや、どうでもいいんだけど、これって私がやったんじゃないの?
私は、首を傾げたけど、まあ、いいかと思った。
だって、エリクさんも嬉しそうだし。
もちろん、子供が助かったからだし!
別に美人に崇め奉られたからじゃないと思いたい。
エリクさんは、お礼を言ってるお姉さんに何か話していた。そして、ちらっと私を見てお姉さんは、頷いて男の子を抱いたまま立ち去っていく。
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