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1ー4 絶対無理なやつ!
去っていったお姉さんは、わりとすぐに、というか超高速で戻ってきた。そして、エリクさんを無視して私に歩み寄ってくる。
ちなみにエリクさんは、なんだか知らないけどあの激マズな液体の入っているらしい壺をかき混ぜている。ほんと、もう、やめとけばいいのに。
私がぼぅっと見ているとお姉さんが優しく微笑んだ。
「言葉、わかる?」
はい、もちろん。
私が頷くのを見てお姉さんは、私に一緒に来るようにと言った。わたしは、さっきの子供並みにびしゃびしゃな服を着たままだったことに気づいた。
やばっ!
すけすけだし!
私、こんな格好でエリクさんの前で寝てたの?
恥ずか死ぬ!
かぁっと顔が熱くなって両手でとりあえず胸元を隠そうとしている私の手をお姉さんが掴むと引っ張る。
「こっち、きて」
私は、お姉さんに手を引かれて後についていく。ちらっとエリクさんを見るとエリクさんは、私を見て頷いた。
うん。
これは、ついていっとけってことかな?
お姉さんは、エリクさんの小屋から出ると私の手を引いていった。小屋の外は、危なっかしい板張りのデッキでどうやらここは、ドブの上に浮いてるらしい。
いや。
とにかく臭いし!
お姉さんは、私をデッキの端に連れていくとそこに置いてあった服を指し示した。
「これ、着替える」
私は、その服を手にとる。
エリクさんやお姉さんが着ているのと同じようなチュニックみたいな服だった。ただし、薄汚れてみずぼらしいことこの上ない。
てか、ここで着替えるんですか?
お姉さんが何かを期待するように私を見つめている。
マジで?
私は、周囲を見回した。
ドブ川には、船が行き交ってて少し離れた場所にはここと同じような小屋がいくつも浮いてて人が何人かこっちをうかがっているのが見えた。
いや、これ、絶対無理なやつ!
ここで着替えるなんて、無理!
「はやく、着替えて」
お姉さんが少しいらっとしている。
「じゃないと、病気、なる」
へっ?
病気?
私は、自分からここのドブと同じ臭いがぷぅんと漂っていることに気づいて悲鳴をあげた。
「いやあぁあっ!お風呂、お風呂、入らせてぇっ!」
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