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1ー5 湯浴みをしたい!
「オフロ?」
お姉さんがぱちくり目を瞬く。
「なんのこと?」
マジでお風呂のこと知らないの?
私は、信じられない気持ちいっぱいでお風呂の説明を懸命にお姉さんにした。すると、お姉さんは、ぱあっと顔を輝かせる。
「わかった!湯浴みのことね」
お姉さんは、近くにあった小さな手桶でドブ川の水を汲むと私に笑顔で差し出した。
「ここなら体を洗えるわよ」
はい?
たぶん、冗談かなんかだよね?
でも残念なことにお姉さんの冗談では、私は笑えなかった。
「ここで、この水で体を洗うなんていやぁっ!」
私が軽く錯乱したみたいに騒いでいたら小屋の奥からエリクさんが顔を出した。
「どうしたんだ?」
「いえ、その」
お姉さんが困惑した様子でエリクさんに話した。
「この子がここで体を洗ったり着替えたりしたくない、と言ってて」
「ああ?」
エリクさんがじっと私を見た。
「普通に子供は、ここで体を洗うしついでに服も着替えるもんだぞ」
子供?
いったい、この人たちの子供年齢は、いくつまでなの?
「私、もう16才なんですけど!」
「16才?」
お姉さんとエリクさんが顔を見合わせる。すぐにエリクさんが私に申し訳なさげに頭を下げた。
「すまない、タザキ。まさかもう成人しているとは思ってなかった」
成人?
そこまで年とってないけど、私は、涙ぐんでエリクさんを見上げた。
エリクさんが困ったような顔をして私を見つめているので、私も黙り込んでしまう。
「では、室内に湯浴みの用意をしましょう」
お姉さんが口を開く。
私もそうして欲しいと思って頷くが、エリクさんが少し嫌そうにきいた。
「どこに?」
というわけで、私は、エリクさんの小屋の奥にあるエリクさんの寝室に桶を持ち込んで湯浴みをすることになった。
お姉さんたちは、桶に外のドブ川の水を汲んでこようとしたので慌てて止めると私は、魔力でお湯を出して桶に注ぎ込んだ。
「きれいな水をこんなに作れるなんて」
私の世話をしてくれてたお姉さんが感嘆した様子で声を漏らした。
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