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1ー6 石鹸がなかったら、聖水でいいじゃない!
どうやらこの世界では、水を作れる人は、少ないらしい。
いや。
もともとの世界でも水を作れる人なんていなかったけど。
私は、一人になると着ていた白っぽい、というかドブ色に染まったワンピースみたいな服を脱ぎ捨て裸になると桶のお湯で体を隅々まできれいに洗った。
ほんと、変な病気になったらやだし!
ってか、石鹸!
お姉さん、石鹸ください!
私が扉越しにお姉さんに呼び掛けるとすぐにお姉さんは、顔を出してくれた。
「あの、髪とかを洗いたいのでシャンプーとボディソープ貸してもらえませんか?」
「しゃんぷー?ぼでぃそーぷ?」
お姉さんは、まるで聞いたこともないというような顔をして繰り返した。
「それは、何?」
私は、詳しく説明をした。
といってもシャンプーとボディソープの説明なんてどうしたらいいの?
お姉さんは、私の説明になんとなく頷いてくれた。
「わかった。石鹸のことね」
でも、お姉さんの表情が曇る。お姉さんは、私に言いにくそうに話した。
「石鹸は、高級品なのでこんなところにはないのよ」
なんですと?
石鹸がない?
私は、お姉さんの言葉に愕然とした。
どういうこと?
石鹸がないって?
いまどきどんな僻地にだって石鹸ぐらいあるでしょ!
だが、お姉さんの表情を見ているとそれはほんとのことなんだってわかったから私は、石鹸を諦めることにした。
でも、こんなバイ菌の固まりみたいになってるのにどうしたらいいわけ?
しかも、全身が信じられないぐらい臭い!
消毒したい!
そのとき、誰かの声がきこえた。
『浄化したいのなら、聖水を作ればいいのではないかしら?』
聖水ですと?
それって妖怪とか魔物と戦うときに使うやつ?
私は、桶の中のお湯に向かって念じてみた。
すると。
なんてことでしょう!
お湯がきらんと輝いてすぅっと透明な青色になる。
これが聖水なのかな?
私は、そっとお湯に手をつけてみる。と、手をつけたところがシュワっと泡だった。
ええっ?
聖水って石鹸水かなんかなの?
私は、恐る恐るその聖水もどきで体を洗ってみる。
うん。
なんか、アワアワしてきれいになってる感じがする!
そうして髪も洗った私は、側にお姉さんが置いてくれたてたぼろ布みたいなもので体を拭って薄汚れた感のあるチュニックに体を通した。
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