雨上がりの謎

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異常な緊張状態が続いた二人は、体の力が抜けて小一時間、ぼうっとしていた。 衛星コントロールルームの薄暗い照明の下で、ふたりは静かに座り込み、何も言葉を発することができなかった。心臓の鼓動が落ち着きを取り戻し、呼吸が整うのを感じながら、彼女たちはただその場にいた。 「ユキ、私たち……」 サクラは重いまぶたを開けて言ったが、言葉は続かなかった。ユキもただ天井を見つめていた。長い間続いた緊張とストレスが一気に解け、二人はその余韻に浸っていた。 「とりあえず、研究室に帰ろうか」 ようやくサクラが声を上げた。二人は立ち上がり、部屋を出た。廊下を歩いていると、妙に庁舎内があわただしい。 廊下の窓に打ちつける大きな雨音に違和感を覚え、廊下を走る人にサクラが声をかけた。 「何かあったんですか?」 「大雨がやまないんだ。今まで、スコールのように、ざっと降ったら、すぐにやんでいたのに、日本中、雨が降り続いて、あちこちで被害が出始めている」  それだけ言うと、その人は走っていってしまった。
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