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序-2
20××年夏。中学3年生の俺、北生 蒼は、テレビのニュースに釘付けになっていた。あまりにも衝撃が大きくて、言葉では言い表せないショックと、恐ろしい時代の濁流を目の当たりにしてしまう。
なんと、『青の革命党』代表の江戸 清太郎が暗殺されたのだ。
青の革命党とは、江戸清太郎、千秋 義清らを中心に結成された政党だ。人間社会に無意識に蔓延しているカースト制への打倒と、それに合わせた法の改正を主に訴えている団体である。
名前の由来は、社会主義革命との差別化にある。
かつて世界を席巻した革命で、多くの一党独裁国家が誕生した。それらは、国旗や団体の名称に赤が取り入れられることが多かった。
しかし、そういった力によって表面的に体制を変える革命ではなく、人間の内面に潜む悪しき常識覆す精神革命。そういう皮肉的な意味合いも込めて名付けられたのだという。
俺は、この政党を強く支持していた。理由は簡単で、世の中から虐げられる側の人間だったからだ。
家庭は、気分屋の親父と、自己中な母親に振り回されていた。夫婦喧嘩はしょっちゅうで、食器と罵声が日々飛び交っている。こんな環境だ。
勿論性格も根暗で、学校では馬鹿にされたり、見下されることがほとんどだった。女性からも相手にされない。隣の芝が青く見える毎日を過ごし、少しでも相手の上に立ちたいと思う我の強いめんどくさい性格もおまけとしてついてきた。
いつしかこの毎日が変わることを強く願っていた。そんな時、青の革命代表である江戸清太郎の演説を街頭で偶然聞いた。それから、彼の考えに惚れ込んでいった経緯がある。
◇
江戸の死により、青の革命は衰退。
彼を暗殺したのは、茨城を中心に勢力を強めている暴力団、『佐竹組』の仕業だとか。青の革命で損害を被った、丸の内法人役員連合組合のお偉いさん方が、各企業の追い出し部屋にいる捨て駒社員を使いパシリにして殺させたのだとか。様々な憶測があるが定かではない。
なんにせよ青の革命は落ちた。しかし、この事件は全国へ波及して行き、革命の動乱をさらに急加速させるに至る。
江戸の同士である千秋義清は、地元秋田へ戻り秋田公国を建国。
佐竹組は、茨城を任侠の支配する半独立地域にした。
宇都宮では、栃木県を守るはずの官軍が、自ら騎士団を名乗る。そして、リーダーの高野が宇都宮公国を建国。
北海道では、アイヌ民族独立運動が本格化。
甲信地方では、教祖の土龍 金友が率いる新興宗教のヒドゥラ教が、信者を増やし勢力を拡大。
東北の太平洋側では、何百もの暴走族が結成。なかでも、福島のマッドクラウンや、八戸から福島県北部にまで勢力を拡大した奥羽列藩連合暴走神使。これらは、陸奥の2強と言われるまでになっていた。
その他日本の至る所で公国や暴走族、チーマー集団、官軍、独立運動、新興宗教、任侠、など多くの団体が出現。それぞれが実力で勢力を伸ばし、奪い合う時代へと変わる。
日本国が無くなった訳ではないが、政府は統率力を失う。また、ヒドゥラ教の後押しを受け、裏で繋がりを持つ神導党が議会で勢力を強め、これにより民主主義の存続が危ぶまれた。
そして国家の象徴である皇室すらも、こうした外敵から身を守らなければならない状況となっていたのである。
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