ふたり

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ふたり

「あ……でもごめんね。勝手にスマホの画面ロック解除しちゃって」 「それは全然いいんだけど、どうやったの? スマホのロックって簡単に開かないはずなんだけど……」 「矢尾さん、あの日帰る前にお菓子食べながらスマホ触ってたでしょ? 解除方法がパターンロック式だったから、画面に指の跡が残ってて。なぞってみたら開けられちゃった」  矢尾和奏は納得しつつも、苦笑いするしかなかった。 「わたし、だめだね。身体は弱いし、運動不足で転んじゃうし、スマホの管理もできてないし……。周りに迷惑かけてばっかり……」  しょんぼりと俯く彼女に、湯川瑠維斗は明るく言葉を返す。 「そんなの気にしなくていいよ。何かあった時は助け合えばいいんだから。ほら、僕はいつも矢尾さんの隣に居るからさ」 「うん。ありがとう」  彼女は少しだけ顔を上げて、少しだけ笑うことができた。 「学校だけじゃなくてさ、僕がいつも矢尾さんの傍に居られたらいいんだけどね(笑)」  微笑む彼を見て、矢尾和奏は首を傾げる。 「いつも?」 「いつも……は嫌……だよね? 彼氏でもないのに……ははは……」  意味を汲み取った彼女は慌てて立ち上がった。 「か、彼氏なんて……そんな、わたしに……あ……」  急に立ち上がった彼女を立ち眩みが襲った。一瞬意識が朦朧として、その間にも彼女の身体は床に崩れ落ちていく。頭が硬い床に打ちつけられるのを湯川瑠維斗はすんでのところで受け止め、彼女と共に床に倒れ込んだ。 「大丈夫!?」  彼女は顔を顰めながらも、「う……うん」と頷いてみせた。目を開けてハッとしてみれば、床に寝そべった状態で隣の席の彼に抱擁されている。そこに担任の先生もやって来て、教室中の生徒に注目されているのだった。もうすぐ朝のホームルームが始まる。  矢尾和奏は、恥ずかしさのあまりか細い喘ぎを漏らした。彼女の胸の高鳴りは火を見るより、いや、聞くに明らかだった。 「心拍数が上昇しています。心拍数が上昇しています」
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