あめふりてんしさん

5/6

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
なんにも いないと くまのこは おみずを ひとくち のみました おててで すくって のみました それでも どこかに いるようで もいちど のぞいて みてました さかなを まちまち みてました なかなか やまない あめでした かさでも かぶって いましょうと あたまに はっぱを のせました  合唱が終わって席に着いた客らは、みな笑顔になっていた。そして新郎新婦が語る。 「僕が転勤になって、真由とは長いこと遠距離恋愛でした。でも」 「雨も楽しい。葉っぱの傘をかぶって水たまりを覗き続けたら、今でなくてもいずれ見つかる。魚じゃなくても何かが見つかると俺は思うぞ、って進藤さんが」 「そう信じられたら、待っている時間は無駄じゃない、とも」 「だからこの歌は、私たちにとって、とても大事な思い出の歌なのです」  新郎新婦は交互にそう言い、そして頭を下げた。ドッと拍手が沸く。  進藤は、目頭が熱くなり、礼を言わずにはいられなくなった。 「このように、上司の土砂降りを晴らしてくれる、頼りになる部下たちなのであります」  爆笑。そして拍手が一段と大きくなった。  その言葉通り、進藤に叩きつけていた暴風雨は、さあっと通り過ぎ、暗雲は明けていったのだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加