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彼は煙草を携帯灰皿に片付けると、空に向けて最後の紫煙を贈った。
「お前は“星”を探せるまで俺を忘れるな。
もし探し当てることが出来たら……そこがゴールでゲーム終了。愚痴でも文句でも何でもいい、好きなだけお前の話を聴かせてくれ。一番幸せだと思った話でもしてくれればいい。笑って聴いて、綺麗サッパリ俺を忘れさせてやるから」
「……ねぇ。そのゲームに勝ち負けあるの?」
「……ないよ。ただ、お前が泣かなくなる。俺のゴールは自己満」
「ゲームにならないって」
煙草の代わり。
背伸びをして口を塞いだ。
「ばーか。探すわけないじゃん……」
口の中に煙草の香り。
好きな香り。
煙草の煙がわたしの肺を痛めるというのなら、薫から病気を奪って、代わりにわたしを痛め付けて欲しい……そう願った。
涙で滲みそうになる夜空には流れ星。
届かない願い事を連れて、何処に消え去って行くの?
* * *
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