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頬に当てられた手は少しだけ震えていた。
星を探すより先に、星より近い千隼を見ていた。
眼鏡が外れたままの彼は説得力が欠けるくらいの童顔で。真面目で。優しくて。
わたしは彼の眼鏡を直しながら「ありがとう」って泣き笑いした。
「どうして“愛しい人”って増えていくのかな……」
ポツリ
独りごちる
「星が増えていく理由と同じじゃないかな。星の原理も、人も、バランスを保とうとするからね」
やっと安定する、彼の撫で肩にエコバッグ。
千隼は左手の薬指に嵌る指輪を星空に翳した。
「薫さーん、今夜は出会えますか?」
わたしの愛する人は"ゲームは続けるべきだ"と今も変わらず微笑みながら言う。
遥か遠くを眺めて、8年も、きっとこれからも……“星”を待っている。(終)
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