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そんなものないし、辞められるのなら辞めたい。
しかし先述のような事情もあるし、それになにより。
「……金がないので辞めたら生きていけないです」
もともと薄給なうえにペナルティを引かれまくり、給料はほとんど残らない。
家賃や携帯の使用料等をどうにか払い、食事は極限まで切り詰めるような生活をしていた。
「失業保険が出るでしょ、失業保険が。
そのペナルティとやらも違法だから訴えりゃたぶん、戻ってくるよ」
自信満々に店主が頷くが、本当にそうなんだろうか。
「仮に訴えるにしても、弁護士とか雇う金はないです」
そんな金があればとうに仕事は辞めている。
ないからこそ辞められず、ずるずると勤め続けているのだ。
「僕がいい弁護士、紹介してあげるよ。
アイツは僕になにかと世話になってるから、ちーっと頼めばツケにしてくれるさ」
「は、はぁ……?」
豪快に笑いながら店主が背中をバシバシ叩いてくる。
見た目から推測される年の割に力が強くて、痛い。
「あとはそうあれ、次の仕事決まるまではここで皿洗いしてくれたら、ごはんは食べさせてあげる。
ほら、これでなんとかなるよね?」
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