第一章 カレーのにおいに導かれ

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その後、今まで俺が会社で受けた不当な……というよりも違法な扱いについて町谷さんからいろいろ聞かれた。 俺としては予定外の、特に解約でのお客訪問時のガソリン代を自分で持つのは当たり前だと思っていたが、それも違法なのらしい。 それ以外にも自分では当たり前だと思っていたことが、あれもこれも違法だと聞かされれば、いかに自分が酷い会社に勤めていたのかと自覚した。 「今まで伊藤さんが不当に扱われた分、会社にはぎゃふんと言わせてやりましょう!」 証明するように町谷さんが力強く俺の手を握ってくれる。 それが酷く、嬉しかった。 まあ、ぎゃふんは古いが。 もしかしたら見た目と違い、俺よりももっと年がいっているのかもしれない。 「本当に今日は、ありがとうございました」 店に入ったときは今にも死にそうなほど絶望していた。 それが今は、未来への希望が見えている。 ここまでしてくれる、店主と町谷さんには感謝しかない。 「いいって。 うちは朝は九時から夜は八時までやってるからさ。 気が向いたら皿洗いに来てよ」 「はい、よろしくお願いします」
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