第二章 昔飼っていた犬

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大橋さんはほわほわ笑っているが、本当に修理されるのかは怪しい。 「終わりましたー」 「お疲れー。 誰もいないし、コーヒーでも淹れようか」 俺がエプロンをはずのと同時に立ち上がり、大橋さんは準備を始めた。 いつもなら仕事をしているサラリーマンや新聞を読んでいる老人がひとりふたりいるが、今日は珍しくいなかった。 「ありがとうございます」 お礼を言ってカウンターをまわり、席に着く。 すぐにコーヒーのいい匂いが漂いだした。 「その。 よかったら昼間、手伝いに来ましょうか」 皿洗いはあとで俺がこうやってまとめてやっているからいいが、調理から配膳、会計までひとりでやるのはかなり大変だろう。 就職活動をしているとはいえ、別に一日中拘束されているわけではない。 昼の忙しい時間くらい、手伝うのは可能だ。 「うーん、そうなるとアルバイト代を出さないといけなくなるし、陽一くんの失業保険にも響くんじゃない?」 「あー……」 そうだ、失業保険をもらっているあいだはなにかと制限があるんだった……。 「別に無給でもかまわないですが」 「そんなのダメだよ!」
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