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彼にしては珍しく、大きな声を出されて思わず目を見開いていた。
「え、でも、お世話になってますし……」
どうして反対されるのかわからない。
大橋さんのおかげで仕事が辞められ、しかもこうやって食べさせてもらっている。
さらに彼はなにかと、余っているからとかいって俺に食べ物なんかをくれた。
ここまで世話になっているのだし、無給で手伝いくらいして当然だ。
それに彼だって楽になるはず。
「だから。
陽一くんはそういうの、変えたほうがいいよ」
大橋さんが厳しい顔になる。
人としてまっとうなことを言っているはずだが、なにがおかしいのか俺にはわからなかった。
「すぐに、お世話になってるからこれくらい当然、って頼まれてなんでもやってただろ」
「そう……ですね」
まるで見ていたかのように当てられて驚いた。
「そうやって自分には不利益でしかないことを、たくさん抱え込むのはよくないよ。
それで陽一くん自身が大変になるんだしさ」
「あっ、……はい」
それは言われるとおりだった。
頼まれて断れずに引き受け、自分は損をする。
仕事でもそれが常で、いつも忙しくしていた。
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