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大橋さんの口もとに苦笑いが浮かぶ。
「それに店、自転車操業だからアルバイト雇うほど余裕ないからね。
ひとりでどうにかするよ」
これでこの話は終わりだとばかりに彼がにっこりと笑う。
確かにモーニングやランチのセットは赤字ギリギリだし、そんなに余裕がないのは推測できる。
けれど、忙しいのに人を雇わないのはそれだけではない気がした。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
コーヒーが俺の目の前に置かれ、ふくよかな香りが鼻腔をくすぐる。
それを胸いっぱい吸い込んだ。
この店は料理も最高だが、コーヒーも最高なのだ。
ここのコーヒーに慣れたら、チェーンのコーヒーショップのコーヒーなんて飲めなくなるんじゃないかと思う。
……まあ、最近は金がないから行っていないが。
でもこのあいだ、ひさしぶりにコンビニでカウンターコーヒーを買ったら、飲めなかった。
それくらい、違うのだ。
「よかったらこれもどうぞ」
さらに、新しい皿が置かれる。
その上には黒い物体がのっていた。
「新作ケーキなんだ。
感想を聞かせてくれると嬉しい」
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