第二章 昔飼っていた犬

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俺からいい感想がもらえ、大橋さんはうきうきだ。 そういうところ、本当に可愛いと思う。 自分が食べた皿はもちろん、洗って帰る。 「これ。 よかったら持ってって」 洗い物が終わり、エプロンを外した俺に大橋さんがレジ袋を差し出してきた。 「えっ、いつも悪いです!」 「いいから、いいから」 断るが、にこにこ笑って有無を言わさず、さらに押しつけられた。 「じゃあ、ありがたく」 受け取った袋を少し上げて、彼を拝んだ。 中にはパンとウィンナー、バナナが入っている。 大橋さんはこうやって、なにかといろいろ俺にくれた。 「明日もよろしくー」 「こちらこそ、よろしくお願いします」 俺が店を出るのと入れ違いで、サラリーマンが入っていった。 「いらっしゃい」 ドアの隙間から僅かに、大橋さんの声が聞こえる。 ちょうどいいタイミングだったのかもしれない。 「帰ったらもう少し、頑張ってみるかな」 早く就職を決めて、大橋さんに喜んでもらいたい。 そう思っていた。 それからもほぼ毎日、店が開いている日は皿洗いにいった。
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