第二章 昔飼っていた犬

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ここまで心配させている俺が、情けなくなってきた。 「まあ、いつまでも前の会社を引きずってる俺が悪いんで!」 笑ってその場をどうにかしようとしながらも明日、まともにネクタイを締められる自信がない。 技術面ではなく、精神面で。 スーツを着てネクタイとか締めたら、ストレスで吐かないか心配だ。 「仕方ないんじゃない? 僕なんかじゃ想像できないくらい、酷い扱いを受けてたみたいだし」 眼鏡の下で大橋さんの眉がきつく寄った。 かなりよくなってきたとはいえ、まだときどき上司怒鳴られる夢を見て、夜中に飛び起きる。 町谷さんからも病院で診断してもらって、労災申請しないかと勧められたくらいだ。 これ以上、あの会社に関わるのは嫌で断ったが。 ちなみに町谷さんは坊ちゃんで童顔な顔に似合わず、悪は徹底的に叩く質らしい。 鼻息荒く、ケツの毛までむしり取ってやりましょうと言われたときは若干、引いた。 「明日はさ、もう採用とか考えなくて、練習だと思って気軽にやればいいんじゃない? 落ちたら、残念会してあげるし」 「そうですね……」 エビクリームコロッケは珍しく、トマトクリームのようだった。
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