第二章 昔飼っていた犬

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しかも、クリームどこ!? ってくらいエビがごろごろ入っている。 それにしても残念会とはなんだか、子供扱いさているみたいでちょっとムッとした。 いや、三十ほど年の離れている俺は大橋さんから見れば、完全に子供なんだが。 「本当に落ちたら残念会、してくれますか」 ちらっと、うかがうように上目遣いで彼を見る。 「もちろんだとも。 陽一くんの好きなもの、作ってあげる。 うちで一番高い、フルーツパフェもつけてあげよう」 眼鏡の下で目尻を下げ、大橋さんがにっこりと微笑む。 「うっす。 頑張ります」 パフェに釣られたわけじゃないが、俄然やる気が出てきた。 「あ、でも、採用されたらないんですよね……」 その事実に気づき、出てきたやる気はみるみる失速していく。 「もちろん、採用が決まったらお祝いだよ。 残念会よりももっといいもの、作ってあげる」 大橋さんが片目をつぶってみせる。 が、彼の不器用なそれは半目になっていた。 けれど、そこが可愛いなんて思っているのは秘密だ。 「うっす。 落ちても採用でもいいので頑張ります」 「うんうん、その意気だよ」
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