第二章 昔飼っていた犬

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あんなに気が重かった面接だが、なんかやれそうな気がしてきた。 不思議だ。 今日ももちろん、食べ終わったあとは洗い物をする。 「いーかげん、食洗機の修理、しません?」 シンクには大量の食器が積まれていて、全部洗うのにも一苦労だ。 「うーん、そーだねー。 陽一くんの再就職が決まったら修理しようかな。 なにしろ、皿洗いがいなくなるからね」 客がほとんど捌けたので、大橋さんはいつ模様に椅子に座り、新聞を広げた。 「約束ですよ。 俺の採用が決まったら、絶対に修理してください」 「うんうん、わかったよ」 軽い調子で彼が頷き、本当にわかっているのか疑わしい。 「はぁーっ」 きっと、俺がついた諦めのため息も気づいていないだろう。 「これ。 よかったら、持っていって」 「ありがとうございます」 皿洗いが終わり、いつものように差し出されたレジ袋を受け取る。 しかし中には余ったパンや果物ではなく、弁当らしきパックが入っていた。 「これは……?」 「カツサンド。 ほら、勝負に勝つ、じゃないけどさ」 照れくさそうに大橋さんが頬を掻き、俺まで頬が熱くなってくる。
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