第二章 昔飼っていた犬

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「……朗報を期待していてください」 「まあさ、そこまで気張る必要はないよ。 落ちたら残念会だし」 「うっす」 大橋さんにここまで気遣ってもらい、明日の面接は上手くいきそうな気がしていた。 「不採用だったです……」 ぐったりとカウンターに突っ伏す。 自分としては頑張ったが、笑顔は引き攣っていたし質疑応答はつっかえつっかえだった。 そりゃ、落ちるというものだろう。 「まあほら、練習だったと思えばいいじゃない?」 落ち込む俺を前にして、大橋さんは苦笑いしている。 「そう、ですね……」 もそりと重い頭を持ち上げた。 それでもネクタイを締めてそれなりの時間を過ごせたし、スーツ姿の男性相手に一応はしゃべれた。 これは一歩前進といってもいいんじゃないだろうか。 「次、頑張ります」 「うんうん、その意気だよ。 ほら、残念会をしよう。 なにが食べたい?」 彼がメニューを手に俺に聞いてくる。 「あー……。 我が儘なお願い、してもいいですか」 受け取ったメニューは開かず、上目遣いでちらっと大橋さんをうかがう。
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