第二章 昔飼っていた犬

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「うん、いいよ。 なんでも陽一くんの好きなもの、作ってあげるって約束だったし」 そう言ってもらったものの、こんなお願いをするのはまだ申し訳なく、そろりと口を開いた。 「……全部のせカレーが食いたいです」 「全部のせカレー?」 不思議そうに大橋さんがその眼鏡の向こうで、何度か瞬きをする。 「はい。 その、ハンバーグと、エビフライと、ゆで玉子がのった、カレー……です」 言ってはみたものの、さすがにこれは図々しすぎるなと自分でも思った。 「あ、いえ! ハンバーグだけのせてもらえれば満足です!」 「わかったよー、ハンバーグとエビフライとゆで玉子、だっけ? 確か昨日のランチで使ったロースが残ってるし、あれもカツにしてのせちゃおうか」 もう、うきうきと大橋さんは調理をはじめている。 「そんな! カツもとか悪いです!」 大慌てで断ったものの。 「え、もしかしてカツまでは入らない?」 少し悲しそうに、彼は眼鏡の奥から俺を見てきた。 「いえ、余裕で入りますけど。 でも」 「じゃあ、決まりだね。 中途半端に残ってても困るし、食べてくれるほうが助かるんだよ」
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