第二章 昔飼っていた犬

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そこまで言われると反対に、断りづらくなる。 「じゃあ、じゃあ。 遠慮なく」 鼻歌なんて飛び出そうな感じで、大橋さんは料理をしている。 それがなんか、凄くいいなと思った。 できるのを待っているあいだ、帰った客の皿を下げる。 「わるいね、いつも」 「食わせてもらってるんで、これくらいしますよ」 やはり手は足りていないので人を雇ったほうがいいとは思うのだが、関係のない俺があまり口を出さないほうがいいだろう。 「はい、おまちどお」 俺の前にできあがった料理が置かれるのと同時に、最後の客が立ち上がった。 「ありがとうございます」 カレーの上にはリクエストどおり、ハンバーグにエビフライ、ゆで玉子とカツがのっていた。 それらは皿からはみ出さんばかりになっており、美味しそうだ。 「いただきます」 三日間煮込んだうえに、さらに肉を追加しているカレーはやはり最高だ。 ハンバーグはジューシーだし、エビはプリプリ。 カツは昨日の生姜焼きの残りだから薄いが、そこがまたよかったりする。 「どうだい?」 お客が帰り、皿を下げながら大橋さんが聞いてくる。 「最高です……!」
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