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が、この状況では凶器となって襲いかかってくる。
避けたいけれどアパートまでは商店街を抜けるのが最短ルートで、疲れ切っている俺に遠回りをする気力はなかった。
「……はぁっ」
聞くものまでも憂鬱にさせそうなため息をつき、意を決して商店街へと足を踏み入れる。
入り口はたい焼き屋。
美味しそうなほかほかの鯛焼きが俺を誘っているが、ビジネスリュックの肩紐を堅く掴み、目をあわせないように俯いて足早にその前を通り過ぎる。
その次はたこ焼き屋の店頭からソースのにおいが襲ってきたが、無視、無視。
息継ぐ暇もなく、今度は肉屋の店頭から暴力的な揚げ物のにおいが漂ってくる。
もうこの辺りで俺のライフゲージはゼロに近くなっていた。
その後もケーキ屋にうどん屋とやり過ごし、どうにか出口まで来てほっとしたものの。
「うっ」
美味しそうなカレーのにおいがして、足が止まる。
その角にはいい感じにレトロな喫茶店が佇んでいた。
最悪最強の敵、だ。
「いや、ダメ。
ダメだ」
ふらふらと引き寄せられそうになる足を叱咤する。
財布の中には三十二円しか入っていなかった。
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