第三章 パートナー

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たまに買う、数軒隣の肉屋で売っているメンチカツなんて目じゃないほど、ジューシーだ。 さらに、スパイスがよく利いている。 それがかかっているトマトソースとよくあっていた。 「大橋さんって本当に、料理上手ですよね」 「んー? 僕は別に、料理上手じゃないよ。 残されたレシピどおりに作ってるだけだからね」 何気なく言い、アフターのコーヒーを彼はお客に運んでいった。 なんとなく、店内を見渡してしまう。 かなり年季が入っているし、もう長くここに佇んでいる感じがした。 大橋さんがお客の相手をしているうちに食べ終わり、いつものように皿を持ってカウンターを回る。 俺が皿を洗っているうちに、新聞を読んでいる老爺を残して他の客は帰った。 「いつもありがとね」 「いいえ」 もうここの皿洗いも慣れた。 この時間が楽しいとすら思っている。 「もうこの店、長いんですか」 今まで店の話はしてこなかったが、さっきのあれで少し聞いてみたくなった。 「そうだねー、五年になるかな」
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