第三章 パートナー

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なんとなく親から受け継いで若い頃からやっているようなイメージがあったので、思ったよりも短い。 「さっき、残されたレシピとか言ってましたけど、誰かからこの店を引き継いだとか……?」 「違うよ。 ここはしばらく空き店舗になっててね。 そこに僕らが入ったってわけ」 「僕ら……?」 繰り返した俺の声を聞き、失言に気づいたかのように大橋さんははっとした顔になった。 「ほら、のんびりおしゃべりしてていいの? 今日は午後から面接、あるんだろ?」 「そうでした」 慌てて止まっていた手を再び動かす。 先ほどの大橋さんは笑って取り繕っていて、それ以上は聞けなかった。 「一度会って詳しい話を、か」 メールを確認した携帯を適当に置き、ベッドで大の字になる。 嬉しいはずなのに高揚しないのはなんでだろう。 それどころか、がっかりさえしていた。 「これで就職が決まれば、いいんだよな」 それでいいはずだし、目指していたはずだ。 なのに今、こんなに心がもやもやとする。 もちろん、今日も大橋さんの店に行く。 「こんにちはー」
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