第三章 パートナー

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大橋さんの顔を見るのが俺の癒やし……とか言ったら、やっぱり引かれるだろうな。 今日のランチは俺の好きな、生姜焼きだった。 前回、生姜焼きだったとき、厨房に林檎ジュースが置いてあったので、どうもあれが隠し味らしい。 「うまいです」 「そーだろー、そーだろー」 俺に褒められ、満足げに大橋さんが頷く。 そういうちょっと子供っぽいところが可愛いと思っていたりする。 今日も食後はテキパキと皿を洗う。 残っている客は常連と仕事をしているサラリーマンだけだから、大橋さんは椅子に座ってコーヒー片手に新聞を開いた。 いつもどおりの、穏やかな午後。 いつからだろう、この時間が永遠に続けばいいと願うようになったのは。 俺がここで皿洗いをする代わりに食事をさせてもらうのは、職が決まるまでの約束なのに。 「俺、これからもずっと、ここで皿を洗いましょうか」 「んー? それは助かるけど、仕事始めたら無理でしょ」 大橋さんの視線は新聞に落ちたままで、俺のほうは見ない。 俺も手もとだけを見て皿洗いを続ける。
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