第三章 パートナー

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この、もやもやとした気持ちを伝えたいが、どう言っていいのかわからない。 「……就活、頑張ります」 結局、それだけを絞り出した。 「うん、それがいいよ。 ほんとにダメなときは常連さんにも聞いてあげるしさ」 「……よろしくお願いします」 無理矢理、笑顔を作る。 彼にとって俺は、拾った犬にすぎないのだ。 家に帰り、連絡をくれた企業によろしくお願いしますとメールを返す。 「これでよかったんだ」 送信ボタンを押し、ため息が漏れる。 いつまでも大橋さんの世話になるわけにはいかない。 皿洗いだって食洗機を直せばいいだけの話なのに、俺が食事をする口実にいつまでも修理しないでいてくれている。 早く就職してお金を稼ぎ、普通に客として通えばいいだけだ。 ……それだけ、だ。 次の日もやはり、俺は大橋さんの店で遅いお昼を摂っていた。 「会って詳しい話をしたいっていってくれる会社があって。 とりあえず来週、行ってきます」 「そうなんだ。 よかったじゃない」 大橋さんが喜んでくれる。 うん、これでいい。
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