64人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
俺は間違っていない。
「まー、またブラックじゃないかって不安はあるんですけど」
コーヒーのカップを口に運びながら、はははと乾いた笑いが口から落ちていく。
「どこの会社?」
「乾設備さんです」
「ああ、あそこ」
彼の口ぶりからして、知っているんだろうか。
「うちの食洗機とかのメンテしてもらってるよ。
担当さん、感じいいし、少なくとも前の陽一くんみたいな顔はしてないから、大丈夫じゃないかな」
比較対象が以前の俺なのがちょっとあれだが、だったら大丈夫……かな。
「まあ、話を聞いてみて決めたらいいんじゃない?
無理そうなら断ってもいいんだし」
「そうですね」
別にこれで決定ってわけじゃないんだし、来週行ったときによく見極めてこよう。
今日は皿を洗っていたらドアベルが鳴った。
「かずさん、まだランチあるー?」
ひょっこりと顔を出した町谷さんは真っ直ぐにカウンター席に座った。
「もうランチの時間、終わったんだけど?」
ちょいちょいと壁に掛かる時計を大橋さんが指す。
時刻はすでに二時を回っていた。
最初のコメントを投稿しよう!