第三章 パートナー

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「そんなこと言わないでよー。 お腹空いて死にそうなんだよー」 しおしおと町谷さんがカウンターの上に萎れていき、大橋さんが面倒臭そうにため息をつく。 「レギュラーメニュー、頼めばいいでしょ」 「えーっ」 メニューを渡されて唇を尖らせる町谷さんは童顔と相まって可愛いが、あれでもう四十も後半とは恐ろしい。 しかも、界隈では鬼畜弁護士として有名なのらしい。 確かに、俺の依頼で元勤め先を倒産にまで追い込みそうだったから納得だ。 もっとも、あの会社はまったく効果のない空気清浄機を、ほぼ騙して強引にリース契約させていたのが別方面からバレて、バタバタしているみたいだが。 「……じゃあ、ナポリタン」 「はいはい」 不満げにメニューを返す町谷さんに軽く答え、大橋さんは調理を始めた。 「前の会社の件ではお世話になりました」 「いいって、いいって。 依頼料もちゃんともらったし」 けらけらと明るく町谷さんが笑う。 依頼料はツケ払いでとかいっていたが、取り返した給料から差し引いてもらった。
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