第三章 パートナー

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それでもかなり手もとに残り、どれだけあの会社から不当に搾取されていたのかがわかる。 「でも本当によかったの? 陽一くんが受けた仕打ちからしたら軽かったと思うけど」 少し心配そうに彼は眉を寄せた。 「あー……。 大丈夫っす」 曖昧に笑って答える。 あの会社には退職の手続きにすら行きたくなかったくらいだ。 もし、裁判とかになって関わり続けないといけないとなったら、苦痛でしかない。 「陽一くんがいいならいいけどさ」 「ご心配、ありがとうございます」 町谷さんの気持ちは嬉しいが、俺にとってこれがベストな選択なのだ。 「おまたせー」 そのうち、ケチャップのいい匂いが漂いだし、できあがったナポリタンを大橋さんが町谷さんの前に置く。 「遅いよ、もう少しで死ぬところだったよ」 文句を言いつつ町谷さんは早速、フォークを握って食べ始めた。 「でもよかったよ、かずさんがこの店閉めなくて。 おかげでこうやって、ごはんにありつける」 「え?」 つい、大橋さんの顔を見ていた。 「この店、閉める予定だったんですか?」
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