第三章 パートナー

11/13

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
だったら、食洗機を直さずに手洗いしていた理由がわかる。 閉めるまでの僅かな間なら、修理しなくてもいい。 「そうそう。 あきさんの三回忌が済んだから閉めるとか言い出して。 あのときはどうしようかと思ったよ」 大橋さんは笑って町谷さんの話を聞いているが、あきらかに黙れと圧をかけていた。 「あっ、えっと……。 僕、次の約束があるの忘れてた!」 大橋さんの無言の圧力に気づいたのか、町谷さんが気まずそうに残りを一気に掻き込む。 「ごちそうさま! じゃあ!」 叩きつけるように千円札をカウンターに置き、町谷さんはそのままあとも見ずに店を出ていった。 「あ、お釣りは……」 「今度来たとき渡すからいいよ」 苦笑いで置かれた千円札を掴み、大橋さんはレジにしまった。 「その。 ……あきさん、って」 聞いてはいけないのはわかっていた。 けれどそれが、俺にも関わっている気がする。 「んー。 もう皿洗い、終わったんでしょ? コーヒーでも淹れようか」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加