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「やめたのは俺のせいですか」
そうじゃないと言ってくれ。
そう願ってしまう。
いつまで経っても直さない食洗機は、それを暗示しているんじゃないか。
「そうだね。
でっかい犬を拾ってしまったから、閉められなくなった」
少し困ったように、彼が笑う。
「でも、もう僕は犬と一緒に暮らす気はないんだ。
里親が決まったら、今度こそ閉めるよ」
眼鏡の奥の瞳は揺るがない。
それだけ決心は固いのだと感じさせた。
大橋さんに拾われた俺は、それなりに可愛がってもらえているのだと思っていた。
でも、それは全部俺の勘違いだったのだ。
俺の居場所は最初からここにはない。
ただ、大橋さんは雨宿りの軒を貸してくれただけ。
俺はもうすぐ、ここを去っていかねばならないのだ――。
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