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最終章 定食、皿洗い、ときにキス
その後、俺は話を聞きに行った会社に就職を決めた。
もしまたブラック企業だったときは、僕が町谷くんに頼んであげるからと大橋さんが言ってくれたのも後押しになった。
「こうやって皿を洗うのも明日までですね……」
皿を洗いながらため息が出る。
週明けから新しい会社での勤務が始まる。
緊張しているかといえばそれよりも、この店がどうなるかのほうが気になっていた。
「本当に店、閉めるんですか」
「閉めるよ。
ほら」
あっさりと言い、大橋さんが指さした先には閉店する旨が書かれた紙が貼ってある。
それは俺が再就職が決まったと報告した翌日にはもう、貼られていた。
それだけ彼の決心は固い。
「それより明日、なに食べたい?
陽一くんの就職祝い、するんだし」
「あー、そうですね……」
明日はこの店、最後の日だ。
店を閉めたあと、慰労会と俺の就職祝いをするのだという。
「てかですよ、明日はやっぱり手伝いに来ますよ。
絶対に大変ですし」
「そーだねー、甘えちゃおうかな」
悪戯っぽく大橋さんが笑う。
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