最終章 定食、皿洗い、ときにキス

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この可愛い笑顔も、もう明日までしか見られない。 翌日は閉店を惜しむ常連客がひっきりなしに来た。 「やはり、閉めるのか」 「僕ももう、年だしね」 笑って大橋さんは客の相手をしている。 それが、淋しかった。 閉店時間まで客は途切れず、最後の客を送り出して大橋さんは店を閉めた。 「お疲れ様でした」 「ありがとう」 微笑んだあと、彼が厨房に立つ。 「いい肉を仕入れたから、焼いてあげるね」 「ういっす」 大橋さんが調理をしているあいだに皿を下げ、俺は洗い始めた。 「明日やるから洗わなくていいよ」 そんな俺に彼は、苦笑いしている。 「ダメですよ、今日のうちにやっておかないと」 なんだかんだいいながら、ずっとこのままなんて可能性も捨てきれない。 大橋さんは意外とずぼらなところがあるのだ。 「できたよー」 「ういーっす」 できあがった料理を今日は、カウンターではなくテーブルに彼は運んだ。 ステーキをメインに、残り物のポテトサラダやエビフライが並ぶ。
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