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しかし店主拘りらしく、それには千四百円の値がついている。
未来の自分に前借りは決めたが、それでも千円超えは避けたい。
泣く泣く、一番安いナポリタンに決める。
「……注文、いいですか」
「ちょっと待ってねー」
軽い調子で言い、店主が手にしたのはカレーの皿だった。
本当に美味しそうなそれは、俺の目の前を通り過ぎ奥の席にいた客の前に置かれる。
「おまちどお」
「きたきた。
やっぱりここに来たら、カレーを食べないとね」
ほくほく顔で年配の男がスプーンを握り、大口を開けてカレーを食べる。
それを見て喉がごくりと音を立てた。
「おまたせ。
えっと、注文だっけ」
「ああ、はい」
店主が俺の前に立ち、曖昧に笑ってまたメニューに視線を落とす。
千円超えは痛い。
痛い、が。
「……ビーフカレー、お願いします」
メニューを閉じ、店主へと差し出す。
「ビーフカレー、ね。
ちょっと待ってねー」
受け取った店主は用意を始めた。
……やってしまった。
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