最終章 定食、皿洗い、ときにキス

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なのに、たった一週間で再開しているとは想像もしない。 「とりあえずなんか食べたら? 仕事帰りでお腹空いてるでしょ」 「そうですね……」 素直に差し出されたメニューを受け取って開く。 ハンバーグやナポリタンも魅力的だが、今日の気分は。 「カレー、お願いします」 「カレーね。 ちょっと待ってねー」 メニューを受け取り彼が準備を始める。 見渡した店内は最後に来た日からなにも変わっていなかった。 「仕事のほうは、どう?」 「おかげさまでちゃんとやってますよ」 どうって、俺のほうこそどうしたのか聞きたい。 なんでこの人は閉店なんてなかったかのようにここにいるんだ? 「はい、おまたせ」 少しして、俺の前にカレーの皿が置かれる。 初めて食べたのと同じ、肉がごろごろ入ったカレーだ。 「いただきます」 俺が食べ始めるのと同時に、最後の客が立った。 会計をしたあと、大橋さんは一度、店を出ていってすぐに戻ってきた。 どうも店を閉めていたようだ。 そういえば閉店までもう、三十分を切っている。
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