最終章 定食、皿洗い、ときにキス

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以前と同じように手際よく皿を洗っていく。 「まだ食洗機、修理してないんですか」 「連絡しなきゃと思うんだけど、つい忘れるんだよー」 大橋さんは笑って誤魔化してきたが、忘れるで済ませていいはずがない。 「だいたい、俺が就職したら修理する約束だったじゃないですか」 「それはそうなんだけどさー」 きっとあのときは修理する気なんて全然なかったんだろうが、店を続けると決めたのなら事情が違う。 「わかりました。 俺から会社に依頼出して、修理とメンテと、……ああ。 契約もきっと、し直さないとですよね? 誰か来てもらうようにしますから」 「陽一くんがいいな」 「うっ」 にこにこ笑いながら俺を見上げてきた大橋さんは妙に可愛くて、つい目を逸らしていた。 「た、担当は上司が決めるんで、俺になるとは……」 「僕は陽一くんがいいな」 俺の話など一切聞かず、大橋さんはなおもにこにこ笑って俺を見つめている。 「……善処します」 え、なに?
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