第一章 カレーのにおいに導かれ

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いや、でも、ナポリタンを食べたところできっと満足できず、明日も寄っていただろうし。 だとしたら出費が一回で済んでよかったと思おう。 「おまたせ」 少しして、俺の目の前にもカレーが置かれる。 ゆで玉子が添えられ、肉がごろごろ入ったそれは美味しそうだ。 スプーンで掬いひとくち、口に入れる。 ひさしぶりのまともな食事、しかも肉となれば感動で声が出そうになったが押しとどめた。 極度の空腹状態だったのもあるだろうが、とにかくうまい。 無心でガツガツと食べ進めた。 満腹状態になり、満足してスプーンを皿に置く。 金がなくても無理して食事をして正解だった。 これで明日から、少しは頑張れそうだ。 会計でレジの前に立って不安になった。 よくある、○○Pay使えますのシールや札がない。 「千四百円になります」 「えっと。 ……にゃん払いは使えますか?」 使えると言ってくれ、そう願いながらおそるおそる尋ねてみる。 「すみません、うちは現金のみなんですよ」 その答えを聞き内心、だらだらと嫌な汗を掻いた。
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